ネザードラム

文章と図解でアプローチするドラムブログ

ドラム演奏と瞑想 / マインドフルネス

(2024.04.22)

 

ドラム演奏と瞑想 マインドフルネス

瞑想 / マインドフルネスって聞いたことありますか?

瞑想

マインドフルネス

こういった言葉を聞いたことがありますか?

 

瞑想というと、昔は宗教やスピリチュアルなイメージを多く持たれていました。

しかし現代の瞑想は科学や臨床に基づいて健康のために広く取り入れられ、

Appleの創業者スティーブ・ジョブズGoogle社員が日常的に瞑想をしている (していた) のは有名です。

 

この記事では

私自身がごく個人的に試している、ドラム演奏を通じての瞑想やマインドフルネスについて書いてみたいと思います。

瞑想とは?

瞑想では

心を集中させて意識を内側に向け

思考や感情を観察し、良し悪しの評価をしないで受け容れます。

 

たとえば呼吸瞑想は、目を閉じて呼吸に注目するものです。

 

吸った息が鼻を通る。肺が膨らんで横隔膜が下がる。吐く息はあたたかい。

こういった感覚を丁寧に味わいながら

思いや考えが浮かんできたら

川を流れていく葉っぱみたいに、良いも悪いもなくあるがままの状態にしておく、といったものです。

 

私はずいぶん慣れてきましたが、はじめうちはわずか数秒の集中すら難しいと驚きました。

マインドフルネスとは?

マインドフルネスという言葉もあります。

今この瞬間に意識を向けて、いま現在の心と体を1つにしようとすることです。

 

どういうことか?というと

多くの人は過去の出来事や未来の心配ごとを考えながら生きていて

いま現在に意識が向いてない、

マインドフルネスではない時間を過ごしていることが多いといえます。

 

心が過去に取り残されたり

未来の不安に押しつぶされそうだったり

「いま現在の濃度が薄い」といった状態が多いです。

 

逆に、どろんこ遊びに夢中で

服が汚れても気にしない子供たちは「いま現在が濃い」ということもできそうです。

 

鳥のさえずりや風の感触、食べ物の味や香り、吸う息と吐く息。

これらを味わって受け容れたり、絵や音楽など好きな活動に没頭する。

マインドフルネスはいま現在に意識を向けることに重きを置いているといえます。

 

瞑想とマインドフルネスには共通点も多いですが、違うアプローチや文脈で捉えられることもあります。

これらは区別が明らかではないグラデーションのような側面もあり、

たとえばマインドフルネスを実践していると瞑想的な状態に入ることもあります。

 

この記事では

その違いについては深く考えず

なんとなく似ている両者を、なんとなくごちゃ混ぜに呼びながら内容を進めていきます。

ドラムを通じての瞑想 / マインドフルネス

瞑想といえば

・ヨガ瞑想

・呼吸瞑想

といった方法が一般的にイメージされますが

瞑想をカジュアルにとらえて「集中して内省する練習」とするなら、

特に形式にこだわらずいつでもどこでも瞑想できます。

 

たとえば

・炎を見つめる、焦点瞑想

・風景をイメージしてそれに没入する、ビジュアライゼーション瞑想

・歩きながら行う、歩行瞑想

・体の各部位を順に意識する、ボディスキャン瞑想

お風呂、トイレ、ベッド。たとえ短時間でも瞑想は可能です。

 

そういう意味では「ドラム演奏」は、瞑想・マインドフルネス状態がやりやすいのではないか?

と私自身、ドラム練習を通じて瞑想を試しています。

 

ここからは瞑想、マインドフルネス状態が

私たちにとってどういったメリットがあるのか?を考えてみます。

瞑想 / マインドフルネスの3つのメリット

1 癒し・ストレスの軽減

いま現在の瞬間に没頭することで、過去の出来事や未来の心配から距離を置くことができます。

これにより日常生活で感じるストレスやプレッシャーが軽減されることがあります。

自分自身との対話やケアをすることで、心理的な安定をサポートすることができます。

 

2 集中力の向上

没頭して取り組む勉強では

高い集中力で効率的に学ぶことができ

創作や表現においても、高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。

 

楽器の演奏においては

ミスがなくなったり、エネルギッシュな演奏に変貌することがあります。

聴衆が明らかに感じ取れるほど、熱量に満ちた演奏ができることもあります。

 

3 遅いスピードの論理的思考を促す

浮かんできた思いや考えを眺めることで、

感情的、反射的な考えに気づきやすくなり、ものごとを柔軟に捉える練習になります。

 

速い思考と遅い思考を区別して使い分ける訓練にもなり

鬱や不安の治療に用いられる認知行動療法にも、マインドフルネスは取り入れられています。

 

演奏と瞑想 / マインドフルネス

ここからは私個人の仮説を多く含む内容になります。

 

ドラムに限らず楽器演奏は

瞑想・マインドフルネス状態への扉を開けてくれる側面があると考えています。

特にドラムなどの打楽器は

誰でも自由に演奏して様になりやすいので集中・没頭がやりやすいです。

 

個人的には

ドラムの演奏をとおして瞑想を試みるときには

他者のための演奏でなく、誰にも見せる気がない、自分を内省するための演奏をします。

 

タイコの音、叩いた手の皮膚に伝わってくる感触、

長い時間をかけてなくなっていくシンバルの余韻など、

ゆっくり丁寧に味わうところからスタートします。

 

30年ドラムを叩いていてシンバルの音が消えるまで味わったことは一度もなかった経験でした。

演奏が上手、下手といった評価軸からも離れて、ただ音や体の感覚を観察します。

良い悪いを評価することもありません。

 

ここからさらに没頭して少しずつ音を紡ぎたくなれば気分に任せます。

3分ぐらい音を出さないこともあります。

と思ったら、ひらめきが冴えわたって手足が動き始めることもあります。

 

フロー状態

集中・没頭によって鬼才のように冴えわたる状態は、フローと呼ばれます。

似た意味として、ゾーンと呼ばれることもあります。

 

フロー状態はいま現在の活動に没頭して全身全霊で集中している状態。

時間の感覚が歪み、自分の意識や外界の気になることが薄れます。

ひらめきや能力が最大限に引き出され、パフォーマンスが発揮されやすい状態です。

 

スポーツ選手が時間を忘れて最高のプレーを発揮したり

芸術家が寝食を忘れて創作のアイデアが湧き出ているのもフロー状態だといえます。

 

心理学者ミハイ・チクセントミハイ氏の研究によると

フロー状態が心理的な充実感や幸福感をもたらすことが示されています。

 

ドラム演奏を通じたマインドフルネスでは

必ずしもハイパフォーマンスである必要はなく

集中・没頭・内省・観察などに向かうことができていればマインドフルネスな状態ですが

図らずともフロー状態に入って演奏が冴えまくることもあり得ます。

 

これからの考察

瞑想・マインドフルネス・フロー状態

こういったテーマとドラム演奏を結び付けて自分なりに考えてきました。

 

前述したとおり

これらは共通点がありながらも、異なるアプローチや文脈をもっていたり

専門家でもこれらを多少ごちゃ混ぜに語ることもあり

その区別は明確ではありません。

 

言葉の定義をはっきりさせようとするのは本質的ではなく、

重要なのは

演奏を通じて特別な気分になったり、自分を癒せることだと考えています。

 

ドラムをとおしての瞑想、マインドフルネスは

私が30年続けてきたドラムへの向かい方とはまったく違って

人に聴かせるでもなく義務でもなく、

上手下手の評価軸の呪いから解き放たれたドラムの楽しさを感じることができるようになってきました。

 

私自身、試行中ですが

ドラムをとおして瞑想したりマインドフルネスになることで

ちょっとだけ豊かに生きられるといいな、と考えています。