(2024.4.22更新)
バンド練習でいつもメンバーから「ハシってる、モタってる」と指摘されてしまう。
リズムキープに悩むドラマーさんは多いです。
本来はバンドのリズムキープはドラマーだけの責任ではなく
メンバー全員でキープしていくものだと私は思いますが
ドラマーだけのせいにされてしまっているケースも多く見られます。
たとえばボーカリストやギタリストが
ドラムの音をよく聞いていなくてどんどん速くなっていくこともあります。
このとき、
彼らの耳にはドラムは遅れているように聞こえ、
「ドラムがモタっていることになってしまう」のですが、事実はわかりません。
この記事では私自身のリズムキープの考えや心がけに触れてみたいと思います。
リズムキープは、できない
リズムキープはできない
そもそもリズムキープに関する記事を書いている私ですが、
リズムキープができるのか?というと、できません。
プロドラマーでも
すごく厳密な意味でのリズムキープを「俺はできる!」と、自信をもって言い切れる人は少ないんじゃないかと思います。
20年ぐらい前に何度か菅沼孝三さんのセミナーに行ったのですが
そこで「リズムキープってどうやったらできますか?」と質問した人がいました。
孝三さんは
「リズムキープって、できないんですよ」と回答していました。
「世界中を探せば1人か2人いるかもしれないけど、基本的にはリズムキープできる人っていないんですよ」とも。
どういうことか?というと
孝三さんがこの文脈で言ったリズムキープは、デジタル的な意味でのリズムキープを指していると思います。
音楽の能力というより
むしろ超能力のような、体内にストップウォッチを持っているような能力のことを指しているように私は解釈しました。
こう解釈するとたしかに
「基本的にはタイムキープはできない」「世界中探せば1人か2人は…」
こんな文脈が成り立つ気がします。
私のリズムキープ観
デジタル的なリズムキープは人間にはほぼ不可能だとして
ドラマー全員が大なり小なり、リズムが揺らいでいるとした場合に
他人から
- 許されない揺らぎ
- 許される揺らぎ
があるのも事実です。
許されない揺らぎは
リズムのスピード変化が不自然だったり、聴き手に不快感を与えてしまうもの。
許される揺らぎは
リズムのスピード変化が少しはあるけど、
聴き手にとってほとんど気にならないレベル。不快感もない。
それを補って余りあるぐらい演奏がカッコよくて魅力的。
なんなら、リズムの揺らぎが絶妙に気持ちよくて喜ばれることすらある、というようなケース。
説得力のあるカッコいいプレイヤーは
あまりリズムキープを事細かく指摘されないんですよね。
音楽のいちばん大事なこと=リズムキープ、ではないと私は思います。
人はリズムキープをやるために音楽をやっていません。
リズムキープは最終目的ではなく、心地よい音楽を作るための手段の1つです。
私の場合は「神経質」と「寛容」の両面からリズムキープを見ています。
バンドメンバーやリーダーとの兼ね合い、音楽のジャンル、会場、客層…
そのときどきで上手にバランスをとりながらリズムキープを見ています。
リズムキープ 私が心がけるポイント3つ
ポイント1 本番中、神経質になりすぎない
私自身が普段心がけているリズムキープのポイントを3つ、紹介します。
本来、演奏中のリズムが速くなる遅くなるのは人間の自然の摂理です。
個人的には
これからのAI時代に、人間のもっている人間力、不完全さは価値でもあると思っていて
気分が高揚してリズムが速くなることは美しい、と感じることもあります。
ステージの上で意固地になってリズムキープに固執してしまうと
多少キープは良くなるかもしれませんが、それよりももっと大切なことを失うこともあります。
ライブは一期一会。
そのメンバーがその場所で、そのお客さんの前で同じ演奏をすることは二度とありません。
ある意味では奇跡的な状況です。
そういった場面でリズムキープのことばかりに脳のリソースを割くと、その他のことを察知しにくくなってしまいます。
歌声の情緒とか味わいとか、お客さんの期待やワクワク感、ステージと客席が一体となったエネルギーの塊感とか。
良い演奏のために察知することがいくらでもあります。
自分ではこのように心がけています。
ポイント2 練習時は神経質にリズムキープしよう
そうはいっても
聴き手に不快感を与えない程度にはリズムキープができたほうが喜ばれやすいです。
練習のときには神経質にリズムキープします。
ドラム練習を動画に撮るのはもちろん、
特に、真横からのアングルでスティックの高さを観察するのはおすすめです。
スティックを上げるべきタイミングで上げられていない、
低くおさえるべきタイミングでおさえられていない。
リズムが乱れる原因はさまざまですが
そのうちのひとつに、
スティックの動きが制御できておらず、その次の動作の乱れにつながってリズムが崩れる、といったケースも多いです。
動画を真横から撮影することでスティックの高さをチェックすることができます。
もしくは
リズムの構造を理解するために、口でリズムを歌う練習も効果的です。
基本的には、口で歌えないリズムは手でも演奏できない、といわれています。
ゴールが明確でないからです。
さらに、
リズムのウラ拍を認識するために、メトロノームをウラ拍で鳴らす練習法も効果的です。
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ポイント3 安易にイエスマンにならない
演奏中、バンドメンバーと微妙にリズムがずれる状態が続くことがあります。
「ボーカルさん、ハシってるなあ」
「いや、僕がモタってるのかな?」
「相手に合わせるべきか?」
「キープに徹するべきか?」
こういった判断を迫られたり、メンバー間でも駆け引きや譲り合いが生まれる場面は多くあります。
そういった場面では
- 安易に自分のスピードを変えない
- 簡単にイエスマンにならない
というのが重要だと思っています。
私の経験則でしかないですが
メンバー間での微妙なタイミング違いが起こったときに
相手に合わせすぎると、あまり良い結果にならないことが多いです。
こういった場合に私がやってみる手だては
・2拍4拍のスネアをためてみて、メンバーとのリズムの合い方を観察してみる
・可能なら、シンバルを伸ばして空白を作り、リズムのとり方をリセットしてみる
・どうにもならないこともある
これらと合わせて重要なのは
メンバーとのリズムが微妙にずれている状況を録音や録画して、メンバー皆で一緒に聴いて確認することです。
気まずい雰囲気になるかもしれませんが、深く追及したいバンドには効果的です。
リズムキープなんかやめて、どんどん怒られよう
最後にちょっと無責任なことを書いてみると
私の場合、リズムキープを諦めてからけっこうリズムキープができるようになりました。
まだ全然ダメなのですが以前に比べればキープ力が格段に向上して、
また、
キープできていない場面でも揺らぎ方がゆるやかで、そんなに不快ではない、許せる揺らぎ方になってきました。
(それまで神経質にやってきた20年は何だったの?)
皮肉にも「怒られてもええわ」と、
半ば投げやりに諦めることでキープ力が上がってしまったんです。
リズムキープなんかやめて、どんどん怒られよう。
という感じで、悩んでも悩んでも解決しない場合には
やけくそでパルプンテっぽいことを試してみるのは良いんじゃないかと、無責任に言ってみます(もっと悪くなることもあります)
この記事がお役に立ちましたら幸いです。